ARTICLE 『2021年 アニメとビジネスの新しい関係』

2021年2月、電通ジャパニメーションスタジオ(以下、DJS)主催の対談企画として、有識者の皆様にお集まりいただき「2021年のアニメとビジネスの新しい関係」をテーマにディスカッションを実施しました。多岐に亘ったテーマの中から、抜粋してお届けします。

【ディスカッションの流れ】

〇電通ジャパニメーションスタジオに関して(代表:武藤隆史)

〇アニメビジネスに関する今後の課題・論点について

1.数土直志 ジャーナリスト (分野:ジャーナリズム)

2.三原龍太郎 慶應義塾大学准教授 (分野:アカデミア)

3.中山淳雄 ブシロード執行役員 ※対談当時 (分野:実業)

4.森祐治 電通コンサルティング 代表取締役 (分野:コンサル)

モデレーター:渡辺哲也(電通)

編集:尾崎健史(ウォーターマーク)/清水惠介(電通)

(※敬称略)

 

「電通ジャパニメーションスタジオに関して」武藤隆史 (DJS代表)

 

DJS設立の経緯と、その背景にあるもの

武藤隆史(以下、武藤)■電通ジャパニメーションスタジオの立ち上げは2018年になります。電通グループは現在、海外で145ヶ国ほどを拠点に展開していて、クライアント様は約11,000社あります。こういったお得意様のマーケティングの課題に対して、日本のハイクオリティなアニメを活用しながらソリューションを提供できないか、と考えてプロジェクトをスタートしました。(中略)

DJSが「なぜ、こういうことをやっているか」をマーケティングの観点で簡単に説明しますと、ひとつは今、若年ほどTVCMや広告的なモノが届きにくく、若年攻略をどうしていくかがいろいろな企業さんのなかで重要課題になっていて、攻略しきれなくて難化傾向にあることが背景として切実にあります。

もうひとつは、デジタルとかWeb基点で仕掛けても情報が届かないという、クライアント様が抱える課題です。総務省のデータによると、2010年から20年の10年の間で、デジタル上の情報が40倍という爆発的に増えているという状況があり、消費者の興味や関心から逆算してコミュニケーションを作らないと埋もれてしまう時代になっているところが背景としてあります。加えて、一方通行的なコミュニケーションではなくて、消費者と一緒に作るコミュニケーションのほうが届きやすいという情報流通経路の背景もあります。

また、モノの機能だけを伝えるのではなくて、パーパス的な、ストーリーとかそういうところも込めて企業のブランドのメッセージをしていくことが今、潮流になってきているということも挙げられます。

 

広告のエンタメコンテンツ化と、オリジナルアニメ広告の効果

武藤■有名なアニメのIPと組みながら企業にマーケティング・ソリューションしていくことは昔からありましたが、近年は、オリジナルを作ってしまうというアニメ展開が非常に増えています。(中略)

いろいろなデータを見てきて、若年にとってアニメは音楽と同じぐらいメジャーなカルチャーになってきているという感じがあって、もしかしたらこのまま若年がエイジングしていってもこの比率がそんなに目減りせずに上がっていくのではないかという感覚もあります。映画の興収も今はアニメがいいですし、オリジナルが増えていることも、実写に比べたら不祥事が起こるリスクが少ないとか、実写以上に表現の幅が非常に広いところもあって、それでアニメが取り入れられているというのもひとつあると思います。

こういった形で、電通のいろんな組織や、電通PRや電通クリエイティブなどと一緒に、電通グループの横断的プロジェクトを作りながら、だいたい30人ぐらいが本業を持ちながら副業的に、日本と海外のお得意様たちと日本の有力アニメスタジオとを連携しながらオリジナルアニメを活用したソリューション構築を行っています。(中略)

 

広告を作るというより、作品を創るという気概で

武藤■アニメ業界のかなり端っこにいる我々ではありますが、志としては、広告を作るというよりは、どちらかと言うと作品を創るという気概でやっています。企業の商品機能などをただアニメトーンで作るだけだと「誰が得するコンテンツなのか」というのがあると思いますが、90秒、3分といった短い尺であっても、ブランドイメージや言いたいことが起承転結のあるストーリーで伝わるということにこだわりながら作品を創るという視点でやっています。(中略)広告を作るより作品を創ることにこだわることによって情報も非常に拡がりやすいというのがあるかと思います。(中略)

 

「アニメと配信プラットフォームを巡る2021年の環境」数土直志 (ジャーナリスト)

 

日本における配信全体の状況

数土直志(以下、数土)■直近のアニメについては、日本も海外もそうですけど、2012年というのがかなり大きな転換点になっていて、いろんなことがこの年に切り替わっているんですよね。その代表的なものが配信で、アニメ映像の配信売上も2012年から突然大きくなり始めて、右肩上がりを続けています。2019年には685億円という数字が出ていますが、DVDBlu-rayなどのビデオグラムの売上が450億を割っているので、もう完全に逆転していることになります。

国内の話としてはもうひとつ、2020年にすごいことが起きている。動画配信に関する数字はいろんな所から出ていますが、僕のなかでは自分の体感と照らし合わせてGEM Partnersさんの出すものが一番現実に近い数字だという気がするので、いつも引っ張り出してくるのですが、それによると、2020年にNetflixが市場の20%を獲ってしまっている。12%占めるAmazonにディズニープラスやDAZNといったものを含めると外資系がすでに5割に達していて、いいことか悪いことかは別として、外資系に市場の5割をもう獲られているという現実については考えたほうがいいでしょう。(中略)

 

映像配信プラットフォームの状況

数土■アニメとは関係なく、世界で影響力が増しているとされる配信で主導権を握っているグローバル・プレイヤーは、ほぼアメリカの会社ですね。僕はYouTubeTubiがけっこう気になっていて、要は、従来の課金型じゃなくて広告をつけて見せるタイプの配信のあたりにビジネスチャンスが残っているんじゃないかと思ってます。

さらに今後、グローバル・プレイヤーに加わりそうなFacebookTikTok。ディズニーやワーナー、NBCに加えて、今まで配信はやらないと言っていたパラマウントが今後やると言い始めていて、ハリウッド・メジャーのなかでソニーだけが「やる」と言っていないところがポイントかと思います。

リージョナル・プレイヤーというのはひとつの国あるいはその周辺の地域だけにサービスを限定しています。大きな会社もかなりあって、アメリカだけやってるHuluの他、中国のテンセントや愛奇芸などよくご存じだと思いますけど、マレーシア発のiflixや中東のSTARSPLAY。これはアメリカのSTARSという会社の中東会社ではあるんですが、実は中東地域ではNetflixと匹敵するシェアを持っています。世界的に見ると、まだNetflixAmazonの寡占となっていない地域がたくさんあります。

アニメ専門の配信会社は、総合チャンネルであるNetflixとアニメ専門のクランチロールが強いです。特にNetflixは、各地域ですごいシェアを獲っていて、半分ぐらいシェアを獲っている国も多くて、残りをAmazon、あるいは専門の媒体が少しずつ小さなシェアを獲っているという形です。会社はたくさんあるんですけれど、Anime Digital Networkは、去年、クランチロールが買収しているので、要はクランチロールです。FunimationNowはソニー・ピクチャーズで、AnimeLabWakanimはソニーミュージック系のアニプレックス傘下です。アニメーションでクランチロールとファニメーション、アニプレックスの3社が統合してしまったので、これを1社だと言ってしまえば、かなり寡占が進んでいることになります。

ただ、寡占が進んでいる一方で、HI-DIVEとか、旧作だけを出すRetoroCrushとか、こういうマイナー・プレイヤーがまだ残っているのと、アジア地域は相当、今、混戦です。特にアジアということで考えると、実はアニメについては、まだまだ中規模プレイヤーが残っているといえます。(中略)

では今後、日本関係でプラットフォームとしてなかなかやりそうなのはどこかというと、僕はメディアドゥの子会社のMyAnimelistじゃないかと思うんですね。この間、講談社、小学館、集英社が出資を決定して、リリースに「デジタルコンテンツの配信、マンガの配信をします」とサラリと書いてあって、この出資社から見ればマンガの配信は分かるんですけど、デジタルコンテンツの配信ということはアニメを視野に入れているかもしれないので、このコミュニティサービスが配信プラットフォームに替わってくる可能性があるのではないかと思っています。(中略)

 

 

「今後のアニメビジネスの論点」三原龍太郎 (慶應義塾大学准教授)

 

キーワードは「独占」 アニメを届ける手段・論じる手段

三原龍太郎(以下、三原)■私が専門としている文化人類学は、フィールドワークが非常に重要な学問のアイデンティティで、現場に張り付いてそこで何が起き、誰がどう行動したかなどを細かく見ていって、そのミクロなところからどういうことが言えるかというアプローチをするのが大きな特徴です。これまで私は「日本のクリエイティブ産業の海外展開」というテーマでそれをやってきました。日本のアニメを海外に持って行こうとしている人たちに密着して、例えば、彼らが『涼宮ハルヒの憂鬱』をアメリカに輸出したときに何が起こったかとか、インドでマーチャンダイジングを展開しようとしたら何が起きたか、といったことを現場でつぶさに見ることを通して、日本のクリエイティブ産業の海外展開に対して何が言えるかを考えてきました。現在はアニメのアジア展開をフィールドワークしている最中です。

そういった立場から、今のアニメ産業やアニメビジネス、今後の論点となるであろうポイントがどう見えているかと言いますと、キーワードは「独占」ではないかと思っています。この「独占」は2つの局面でカギになっていて、ひとつ目はアニメを「届ける」手段の独占。ふたつ目がアニメを「論じる」手段の独占です。このふたつが外資、もっと言うと英語圏のプレイヤーに独占されつつある、というのが私の立場からの見え方です。

「届ける」手段の独占というのは、Netflixなどグローバルなプラットフォーマーが、日本で作られたアニメを世界に拡げる役割を独占的に担うようになってきていることを指します。これには善し悪しがあって、彼らに任せることによって世界中でアニメ作品の認知度を上げるハードルが下がるというメリットもありますが、逆から言うと、蛇口を握られてしまっているので必ずしも手放しで喜べる状態ではない。もう少し概念的に言うと、アニメのためのプラットフォームなのか、プラットフォームのためのアニメなのかというところが曖昧になっていて、おそらくプラットフォームのためのアニメになりかかっているというのが現状ではないかと思います。

これについて私は「クリエイティブ油田」という仮説を持っています。中東などの産油地域に参入した国際石油メジャーが、その地域の石油を吸い出すことで巨万の富を得るというビジネスに近いことを、Netflixなどが世界各地にいるクリエイティブな才能を取り込むことでやっているのではないか、という仮説です。もう少し具体的に言うと、日本のアニメ産業全体がグローバルプラットフォーマーの下請けのような形になってきているおそれがあると思っていて、アニメを世界に「届ける」局面をグローバルプラットフォーマーに独占されつつあるのではないか、ということです。

ふたつ目の、アニメを「論じる」手段の独占はもう少し学者的な関心から来ています。「アニメをどう論じるべきか」という相場観を、アイビーリーグの大学や、19年にマンガ展を開催した大英博物館のように、世界的に名の知られている学術的に権威ある英語圏の機関に牛耳られつつある気がしています。最近日本で流行ったピエール・ブルデューの『ディスタンクシオン』で論じられていることに近いことが、おそらくアニメ研究の分野でも起きているのではないでしょうか。「誰が権威をもってアニメを論じることができるのか」に関してはグローバルな規模でヘゲモニー争いみたいなものがあって、結局、英語圏の有力大学や大英博物館などの先生方のアニメの論じ方が、アニメに関する「正しい」議論であるというふうになってきているのではないかと思います。それ自体は必ずしも全てが悪いというわけではないのですが、英語圏のアニメ論を紐解いてみると、私のように小さい頃から日本の濃密なアニメ環境で育ってきたような人間が感じるアニメの良さについての直観的な感覚みたいなものが全然すくい取られていないと感じることがあります。彼らは彼ら自身のアジェンダに従って、アニメをある意味、ダシに使っているようなところがあるので、その辺りでけっこう乖離が生じているような気がしています。このふたつの局面における独占というものが、アニメが世界に広がったことによって起きてきている現象なのではないかと思っています。

 

独占への対抗策 その1:カウンター

三原■こういった「独占」に対して今後どういう対処ができるかということですが、私はふたつの「対抗策」があると思います。まずは「カウンター」。要は、独占しようとして参入してくるプレイヤーに対してストレートに対抗し、独占させないためのアンチトラスト的な打ち手を法制度の動員も含めて打つということです。こういった形の「カウンター」は、世界的なGAFA規制の動きなど、アニメの隣接諸分野ではすでに起きつつあることではないかと思います。(中略)

 

独占への対抗策 その2:オルタナティブ

三原■もうひとつは「オルタナティブ」です。「独占」されているチャネル「以外」のチャネルを構築する努力を続けるということです。

確かに今この瞬間はNetflixなどのグローバルプラットフォーマーがアニメを世界に届ける手段を独占しているのかもしれず、従ってアニメの海外展開のフェーズを彼らに任せてしまった方がビジネス上は楽であるのかも知れません。プロジェクト単位で見ればそれが最適解なのかもしれませんが、アニメ産業全体の未来という観点から見た場合は本当にそれでいいのかどうかは疑問が残ります。彼らに頼らずにアニメを世界に届ける手段、特に自前の手段を模索するという実践を止めてはいけないのではないかと思います。今現在の既存のビジネスモデルにロックオンされて思考停止するのではなく、常に「それ以外」の、つまり「オルタナティブ」なアニメの世界への届け方をリスクを取って模索し続けるような、広い意味での「アントレプレナー」的な姿勢を維持することは非常に大事なのではないかと思っています。

 

「今後のアニメビジネスの論点」中山淳雄 (ブシロード執行役員)※対談当時

 

ブシロードのプロジェクト・ポートフォリオ

中山淳雄(以下、中山)■この10年ずっとゲーム事業をやってきている事業畑系の人間で、ブシロードに入ってからの直近4年ぐらいは、少し違う角度でスポーツライツや音楽ライヴなどもやっています。

まず、ブシロードの話からしますと、過去、タイトルは全部メディアミックスでやってきています。アニメ、アプリゲームを出す、イベントも主催する、MDも出す……という同じ展開を日本でやって海外へ持っていくという取り組みをしてきたんですけど、結構巨額の投資費用がかかります。それでも0円、基本的になんにもなりませんでしたとなる可能性もあります。

この業界でアニメを売っている会社は僕が知っているだけでも100社ぐらいあるんですけど、ほとんどが売り切りで、後行程でグローバルまで持っていけてる会社は10社ないんですよね。(中略)外に出してしまって一番苦しい点は、データを全く持っていなくて売り切りで終わっているところなんです。(中略)昨今難しいのは、アニメとゲームの組み合わせとか、メディアミックス自体も各社がやるようになっていて、開発サイズが大きくなっていることなんです。(中略)、しかも勝ち率はそんなに高くなったわけではないという苦しさもあるわけです。(中略)

 

外資への期待

中山■少し話題が変わりますが、96年にアメリカの通信法が変わってケーブルメディアが出てきて、そのあとOTTが出てきたという動きのなかで、北米はグローバルメディアだけ異様に成長したんですね。だいたい年間20兆円がプロダクションに使われていて、プログラム1時間あたり5,6億円使うのが当たり前。『ゲーム・オブ・スローンズ』だと12億とか15億になるのに対して、日本のアニメはいっても1時間4,5千万なので、正直、激安。だから実は10倍で売れるはずなんです、ものによっては。

正直、日本のアニメは現状の2.5兆円市場の半分以上が海外になっていて、世界でいけば制作コストを全然まかなえるぐらい波及力があって、スポーツライツの世界ではもう2000年から2010年でプレミアムリーグ20チームの内12チームは外資なんですよね。払えるところが「ユーザーがこれぐらいついてくる」という金額で買うし、ちゃんと成果も出すので、選手にもどんどん還元されていく。ところが、日本のメディア産業は、テレビ局がこの15年間、無風すぎて競争価格が起こらなかったので、個人的には、むしろ外資にガンガン買ってもらいながら、作る力に対して彼らがちゃんと還元することに期待したいです。先ほどの「9割捨て」のような世界だと、結局はなんのフィードバックもなく売り切りで終わってしまって、そのあとが育たないので。(中略)

僕自身の博士論文で、20世紀のパッケージビジネスと21世紀のオンラインビジネスのなかで、無課金やフォロー者とうまくコミュニティを作りながら、どうやって課金者や超高課金者が伸びていくのかと見ています。電通さんほかが組み上げていったマスメディアの力で、100%の課金者のなかに超高課金者がいるというなかで、物を売るビジネスから85%ぐらいの無課金者がいて、そういう人たちのなかからたまに課金者に転換して、その内の1%の人が80%ぐらいの売り上げを占めてしまうんですけど、こういうのがどうやってできていくのかを分析しているところです。(中略)

こういうときの指標になりそうなのが、ゲームやスポーツですでにあった動きです。ゲームは90年代まで日本が9割握っていて、2000年代に入って4割ぐらいに落ちて、2020年になって市場規模としてはもう3割未満なんだけど、プラットフォーマーや海外入れると領域によっては影響力を保っている状態。そのなかで、ゲームについては、スポーツライツでいう2010年がゲームでいう2000年ぐらいのイメージがあるんですね。高く買ってくれるなかで売り切りにならずに、そのあともずっと製造としてはどうやっていくかという力をつけ続けるには、海外に後工程も含めて乗り出していこうという会社ときちんとデータを取り合って、11個、作品ごとに浸透させていこうという動きが必要ではないかというのが僕のなかで確実な意識で思っていることです。

 

「2021年 アニメとビジネスの新しい関係」森祐治 (電通コンサルティング代表取締役)

 

ビジネスモデルが不鮮明なアニメ業界

森祐治(以下、森)■僕もコンサルの仕事をやりつつ学校で教えていることもあって、経営学的な視点でアニメをどう見るか、というところに興味がいっているところです。

僕自身は今、経営コンサルティングの仕事をやっていますが、実は日本国内だけ見ても、メディア・エンタテインメントの学術研究というのは非常に弱いんですよ。きちんと構造化がされていなくて、せいぜいあっても公共経済学だとかで、規制の立場から「電波はどうあるべきか」といった話はあるんですけど、産業論としてのメディアはあまり取り上げられていない。ましてや、そのなかのコンテンツについてはデータやモデルがないので、勝った人が「俺、その時代にプロデューサーをやってたんだよね」と言っている話が一般論化されてしまって、死屍累々なところが全然説明されていないので、若い人たちが夢見てどんどんそっちの業界にいっては死んでいく。そういうことを放置していていいのか、ということは感じていて、きちんとモデル化したいとずっと思っていますし、その延長線上で、海外で勝てるモデルにはどういうものがあるのかというのがポイントになってきています。

 

アニメは多様な入口からの収束点に

森■アニメの話というのはいろんな側面があって、例えば、独占の問題や産業構造論もあれば、当事者もしくは当事者じゃない人たちが自分たちの地位を作るためにそれを持っているというケースもあるんですけど、日本国内でいうと、だいたいコンテンツというのは「Creativityとしてのアニメ」のほうに興味がいくんですよね。(中略)

僕の興味は、ビジネスとして「アニメはどうやって儲けるのか」という、どちらかというと現象論よりは構造論のほうにありまして、アニメの作品というのは寡占か独占か、あるいはもう全部制覇されているのではないかという配信のチャネルの議論もあれば、情報経済学で言われるところの、例えばテレビで放送したものをDVDや配信で売るなど、同じアイテムを違うビジネスモデルで売っていくバージョニングもあります。

さらに日本のアニメの強みはデリバティブだと思います。ライセンスやマーチャンダイジング、あるいはキャラクターの切り売り、楽曲のタイアップ。これが得意なのは、実態としては日本のアニメとディズニーだけなんです。そういった意味で、日本のアニメの強みというのはこういった仕組みを、自由自在に組み合わせて作っていくというところだと思っています。今まではそれが理由で、海外に行きづらかったわけですよね。作品だけで売っていくと買い叩かれていたし、そもそも深夜枠のアニメの売り先があまりなかった。いわゆる一般の放送ではかからないので、マイナーなマルチチャンネルの、ケーブルなどの上ぐらいでしかかからなかったし、そのなかでも専門というのはちょっと前までほぼ皆無だったので、それこそアニメ声優だとか特定のコーナーでしか売れなかったということもあったんですが、今はいろんな人がたくさんIP放送で観るようになっているので、ここは変わってきていると思います。(中略)

 

アニメの熱狂的なファンコミュニティが全世界的に存在する時代

森■(中略)ライセンシングをやっている人たちのなかでも「アニメって、やっぱりすごい」という話があって、2020年代で注目しておくべきアイテムとしては、ライセンス関係の業界団体LIMAの会誌『LICENSE GLOBAL』に「The Architects of Anime」と題して、「ただ単純にライセンシングしてキャラクターだけ売るのではなくて、IP生態系というものを作っていくことがとても重要ではないか」という記事があります。

海外で売れている、うまく金を集められているアプリゲームというのはオンゴーイングでストーリーがマルチメディア展開しているものと、昔からの有名ないわゆるビッグIPの、どちらかになっちゃうんですよね。ちょっと前に終わっちゃったIPというのはあまりうまくいかなくて、『ドラゴンボール』みたいに昔成功したものもですけど、『Fate』系統や『SAO』など、いまだにコミュニティを維持できているところというのはすごく成功するということもあって、ただ単純なシンデレラIPを持ってくるのではなくて、そのバイタルな状態を持って来ないとうまくいかないのではないかということがその記事には書かれています。

なかなか鋭いなと思っていて、先ほどのファンダムの議論というのは重要になってくると思うんですが、ファンをどうやって取り込めるかというのが、スポーツやゲームもそうですが、とても重要な共通ポイントとしてあって、アニメとしては先ほどのクリエイティビティのアニメの部分で、のりしろがいろいろなところから持ってこられるという点においても非常にいいだろうと。キャラクターが歳とらないし、ストをやらないことはアメリカ流に言えばすごくデカいところがあって、そういった意味ではアニメというのはすごくハンドルしやすいという議論になってきているというのがあります。

 

電通ジャパニメーションスタジオへのアドバイス

 

DJSへの今後のアドバイス

渡辺■最後におひとりずつ、「こうしたらいいよ」といったものも含めてDJSへの応援メッセージをいただけたらと思います。

中山■電通さんは、あらゆるビジネスをきちんと間に入って作ってきたじゃないですか。スポーツの世界で言えば、オリンピックにも出たアスリートが破門同然でスキームを外に持ち出してスポーツ学を作ったことがありましたけど、電通さんにもこういう禁じ手覚悟で、各社が秘密のツボ的に作ったアニメのプロセスをある程度外に出すとか共有することは、中間の存在の人としてけっこう大事なのではないかと思っているんですね。先ほどの、販促アニメはこれまでと違う使い方をしていくというのも、ぜひいろいろな世界で見せて欲しいですし、われわれメーカーの課題に対して、どう中間職的に入っていただけるかも期待したいところです。

三原■おそらくクライアントに対するソリューションとしてのアニメという位置付けでやられているのではないかと思いますが、クライアントのベネフィットだけではなくて、アニメの側に対するベネフィットとしても何かが返ってくるような、そういった相互作用的な流れを作っていただけるといいなと思いますし、アニメクリエイターへの還元といったことも念頭に置いていただきたいなと個人的には思います。

数土■日本のメディアミックスはもうあらゆる分野で開発されたように見えるけど、まだきっと開発する余地とか、新しいというか、「まだなかったんだ」というものもあると思っていて、それを見つけられるのはたぶん電通みたいにいろんなところにアンテナを張っている人たちなので、そこに力を発揮してもらえるといいのではないかと思いました。

森■ふたつあって、ひとつは、クリエイターに対して還元することは、あらゆる形でやるべきだと思います。ただ、単純に還元しちゃうと彼らは金を使っておしまいだったり、金の使い方がわからずに積まれておしまいになったりして、それは才能自体をうまく使えてないことになると思うんですね。かつて新海さんが有名になっていくプロセスで大きな問題になったのが、彼の作り方がアニメ業界のスタンダードと違ってあまりにも独特すぎてちょっと特異なチームを作らなければいけなかった。このあたりが第2、第3の新海さんが出てこられない背景だったと思うので、そのあたりを何か変えられるものができるといいと思います。

もうひとつ、海外のクライアントさんに積極的にクリエイティブスタジオ・ジャパン・アニメというものを出していっていただくことで、「もっと観たい」「それのグッズ欲しい」と言う人がたくさん出てくるような仕組みを作っていって欲しいですね。先ほど、物材をグローバルに展開するのは難しいという話がありましたが、やれていないわけではくて、ずいぶんご苦労はされていますけど、日本のトイ・カンパニーでもシルバニア・ファミリーなどはうまくいっていて、仕組みも皆無ではない。クリエイターや業界にいる人間が新しいスキームに挑戦してこなかったし、会社として体力のあるソニーさん以外はなかなか出てこられない。そういう意味ではもっとブレイクスルーがあって欲しいと思うので、それこそ電通にはビジネス自体のプロデュースをぜひやっていただけると、いちグループ社員としてもうれしいです。

渡辺■また第2回、第3回とやりたいと思います。今日はありがとうございました。

 

最後に…DJS代表から

日本のアニメビジネスを牽引する知の巨匠の皆様から非常に有意義なお話をたくさん頂くことができました。このあと白熱したディスカッションが規定時間を超えるくらいまで行われ、目から鱗が落ちる様な話がたくさん飛び出し、ご紹介したい内容がたくさんございましたが、記事の長さの関係等で今回は割愛させて頂きましたことが残念でなりません。

電通ジャパニメーションスタジオは、日本、米国、中国のクライアントと一緒に、制作中も含めて、10数本のブランデッド短尺アニメ作品や、たくさんの広告漫画を2018年から企画制作してまいりました。アニメ業界の端っこにいる我々ですが、巨匠の皆様からいただいたアドバイスを胸に、日本のアニメ産業の発展と、クライアントのビジネス成長の両方が達成されるビジネスプロデュースを日々進化させて行こうと思いますので、引き続き何卒宜しくお願い致します。

電通ジャパニメーションスタジオ代表 武藤隆史

WRITER

清水 惠介

アニメ×コンテクスト・プランニング

お問い合わせ

株式会社電通Dentsu Japanimation Studio

Email:japanimation@dentsu.co.jp

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